草履を脱ぎ捨てた斎藤は足音
- By janessa
- On 20/01/2024
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草履を脱ぎ捨てた斎藤は足音で不機嫌さを表した。
「ひとまず俺の部屋に連れてく。」
「え?」
総司は気の抜けた声を漏らしてきょとんとした。
「深い意味はない。俺の部屋が一番近いからだ。」
いくら三津が小柄で軽くても,【生髮方法】生髮洗頭水效用&評價! @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 :: 同じ体勢を保ったままここまで帰って来るのは大変だったんだ。
『俺の腕にも限界がある…。』
ここで三津を落とせば鬼の形相で怒り狂うんだろ。
今更だが背負えば良かったと悔やむ斎藤。
己に苛立ちながら部屋に向かった。
「そ,そうですね!私は土方さんを呼んで来ます!」
斎藤の不機嫌さは自分のせいだと思った総司は狼狽えながら廊下を走った。
腕の限界ももう間近。三津を連れて部屋に戻り,たえに床を延べてもらって,ようやく腕に自由が戻った。
三津は規則正しい寝息を立てている。
その脇に腰を下ろして安堵の息を吐く。
「土方さん早くっ!!」
『あいつは俺に安らぐ時間も与えてくれんのか。』
ほっとしたのも束の間,騒がしい足音がこの部屋に向かっていた。
「斎藤さんっ!」
期待を裏切らない騒々しさで豪快に障子が開いた。
「ちょっとは落ち着け…。」
「沖田さん!お三津ちゃんが起きてまうでしょ!」
斎藤にうんざりした目を向けられ,たえにも叱られて,総司はしゅんと背中を丸めた。
「斎藤すまなかったな。」
落ち込む総司を押しのけ,土方が三津の寝顔を覗き込んだ。
「もう落ち着きましたから安静にさせておけば良いかと。」
土方は寝顔を見つめたまま,顎をさすって思案した。
「…だったら斎藤。しばらくこいつを預かっておいてくれ。」
「え!?」
思わず大声を上げた総司を三人がじろりと睨む。
「生憎俺は仕事が溜まって忙しい。
こいつの部屋は遠くて目が届かない。総司は煩い。
どうせお前は散歩に行くんだろ?だったらこいつに部屋を貸せ,以上だ。」
「…承知。」
それだけ言うと土方は部屋を出て,たえはどう言う事?と首を傾げた。
「仕事が忙しいから,そのせいで三津さんを起こしてしまうかもしれない。
三津さんの部屋は遠いから,何かあっても気付くのが遅れる。斎藤さんはあまり部屋にいないからここが静かでいい。
土方さんなりの気遣いです。私の所は論外…みたいですね。」
総司は弱々しく笑って頭を掻いた。
ゆらゆら揺れていた心地よさがなくなった。
ちょっとずつ現実に手繰り寄せられていく。
勝手に瞼が持ち上がる。
「まっ…暗…。」
誰も居ない部屋に一人ぼっちだと気付いた。
「おたえさぁ…ん…。」
一緒にいた彼女はどこだ?
ここはまだ診療所かな?
『違う,誰かがもうすぐ着くって言ってたな…。誰やっけ…。』
ゆっくりと瞬きを数回してぼーっとしていると顔を覗き込まれた。
「あ…斎藤さんだ…。」
そうだ,最後に言葉を交わしたのは斎藤だと思い出した。
そして今目に映るのも斎藤。
「どうしたんですか?」
寝起きだからあまり見ないでと笑って目をこすった。
「どうしたもこうしたもない。気分はどうだ?」
斎藤らしい繊細な手つきでうっすら滲んだ汗を拭った。
「気分?あのゆらゆらされてる時が一番良かった。
ふわふわしてて気持ちよかった。」
呑気に笑う三津に斎藤は小さく溜め息。
「そうか。腕を痺れさせて帰って来た甲斐があったって訳か…って,そうじゃない。
頭が痛いとか腹が痛いとか,不調はないかと聞いている。
俺ではなく副長だったら殴られてるぞ。」
「ホンマや。拳が飛んでくる。」
くすりと笑って目を閉じた。
早く治さなきゃ後が恐い。微睡みながら,明日の家事の段取りを考えていた。
「何も考えずに休め。」
その言葉にこくりと頷いて,三津はまた寝息を立てた。
「斎藤さぁん…。」
廊下から情けない声がした。
真夜中の訪問客に斎藤は顔をしかめた。
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